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2008/03/24

資料・トピック43 地方自治体のオリジナルキャラクター

お彼岸を過ぎましたが、寒の戻りか肌寒い天候不順な日が続いています。
そんな中、東京では3/22に桜の開花宣言が出て、誕生一周年のさくらパンダが上野公園で活躍する姿(去年の様子はこちら)も期待できそうです。

まず近況報告から。
3/18に、キャラクタービジネス実践講座「コーポレート&プロダクツ・キャラクター活用法」の第2回「コーポレート・キャラクターの効果とブランディング~多様化するコーポレート・キャラクター活用法~」で講師をしてきました。会場の生の反応から、もっと説得力を増せるといいと感じられる部分もうかがい知ることができ、勉強になりました。参加いただいた皆さんに感謝致します。

さて今回は、企業・団体のオリジナルキャラクター活用に関する変化を示す例として、最近の地方自治体のオリジナルキャラクター活用についてご紹介します。

まず、2007年1月以降の全国主要紙 (読売、朝日、毎日、産経、日経四紙、FujiSankei Business i.、スポーツ各紙)と主要ビジネス誌を対象に「企業」×「キャラクター」で記事検索したところ、トピックとして参考になりそうな161件の記事が抽出されました。
広告と受け取られかねない内容のせいか、一般的な企業やブランドのオリジナルキャラクターに関する記事は少なく、全体の1/4(約40件)を地方自治体・団体関連の事例が占め、特に全国紙での掲載が目立ちました。以下は、それらの記事から窺えた傾向です。

鳥取県境港市の水木しげる先生「ゲゲゲの鬼太郎」や富山県氷見市の藤子不二雄A先生「忍者ハットリくん」など、地元出身の有名マンガ家がいる場合、彼らの人気キャラを使った町おこし例もありますが、全体的な傾向としては、地方オリジナルのキャラクターを新たに作るケースが殆どで、全国各地で続々と“ゆるキャラ”が、そして最近では“萌えキャラ”も一部で生まれているようです。

最近話題になった“ゆるキャラ”は、「ひこにゃん」ではないでしょうか。昨年4月に当Blogで紹介した通り、このキャラクターは「国宝・彦根城築城400年祭」のマスコットとして誕生し、400年祭終了前後には使用方法を巡ってニュースにもなりました。現在は彦根市のキャラ(特別住民票もあります)として落ち着いたようです。
事務局Blogによると、先日3/4~6には「近江まちあそび観光キャンペーン」で新宿に遠征したり、6月開幕の「井伊直弼と開国150年祭」にも登場予定と活躍を続けています。人気を集めた一因となった、イベント会場での着ぐるみキャラ活動を記録した動画サイトの積極活用(YouTubeで470件ニコニコ動画で224件もあります)は独特で、興味深いものがあります。

杉並区の「なみすけ」は、昨年8月に公募で選定された区のキャラクターです。
子育てサイトなど区のホームページ上でのマスコットとしてだけでなく、10月からは、なみすけが杉並区の施設やイベントを見て歩くスタイルのBlogもこまめに更新されており、区民はもちろん、全国に杉並区を紹介する草の根的メッセンジャーとして活動中です。
キャラ自身が地域について等身大の視点で地道に語っていくこのやり方は、区民とのコミュニケーションを具現化し、距離を縮める方法の一つとして新しいものがあります。

変り種としては「夕張夫妻」があります。
昨年9月の登場以来、「金はないけど愛はある」を座右の銘に、離婚件数が全国一少ない夕張市を夫婦円満の町として、『負債』の暗いイメージを『夫妻』の明るいイメージに変えるべくPRしているそうです。関心空間でもちょっとした話題に。作者の三寺雅人さん曰く「キャラクターはどこかにとがったところがなくてはいけない。夕張は負であることが特徴。隠すよりも前向きに活用すべきだと考えた。」とのこと。この発言には頷かされるものがあります。

最近のトピックとしては、2002年登場の仙台市「ワケルくん」に代表される、ごみ減量・リサイクル啓蒙を目的としたキャラクターが全国の自治体で増殖中です。例えば、弊社同僚の故郷、広島県福山市の「くわいちゃん」は、今年発表された環境啓蒙キャラクターです。
また、朝日新聞R25で紹介されたように、裁判員制度PRのため全国の高検・地検のキャラクターが続々と誕生中ですが、これらの多くも“ゆるキャラ”と呼ぶべき雰囲気を漂わせています。
ただし、これらの一連のキャラクターを通してのメッセージがどれだけ一般住民に浸透しているかは、ケースバイケースかと思われます。

そして、世間一般というよりネットの某巨大掲示板周辺で話題になっているのが、地方自治体の“萌えキャラ”です。
2007年1月には茨城県下妻市公式サイトの「シモンちゃん」が注目されました。
地元に生息する国蝶・オオムラサキがモチーフで、現在で三代目、こちらの初代&二代目と比べると、キャラの違いが一目瞭然です。朝日新聞記事(こちらに一部が再録されています)によると、自治体サイトのお堅いイメージ払拭のために作ったのに、グッズ化を持ちかける企業もあったそうです。

他にも、佐賀県大和町の公式サイトでかつて注目され、佐賀市との市町村合併で姿を消した「まほろちゃん」(町役場の職員の方が書いたそうです)が佐賀市公式サイトのキッズステーションで復活したことが話題になりました。
探偵ファイルによると、こちらのキャラは自治体サイトの取っ付きにくさの払拭と、子どもにも読みやすいように、ということで作られたそうです。

こうしてみると、“ゆるキャラ”にせよ“萌えキャラ”にせよ、日頃から「お堅い・敷居の高い」イメージを持たれがちな大手企業や自治体が、上から目線を軽減し、親しみやすさを訴えかけるための手段として使われているようです。

特に地方自治体では、首都圏への一極集中が進む中、どうやって地方の存在感を増して注目を集めるか、特に若者層の流出を防ぐかが根本的な課題であり、そのための方法論の一つかと思います。
(いみじくも昨日3/23には長野県下條村で、ご当地ヒーローの地域戦隊カッセイカマンによるイベント『ローカルヒーロー大進撃!』が開催されています。)

ゆるキャラ”の場合は、子どもでも真似して書けるような「素人っぽさ」をあえて残すことで、手作り感や人の血が通っている感を醸し出し、警戒心を解く効用があると思われます。
これらの効能を狙った典型例は、1992年バルセロナのコビーや1998年長野のスノーレッツなどのオリンピックキャラクターで、北京オリンピック関係者も同じ趣旨の発言をしているようです。

そして“萌えキャラ”の場合は、採用した自治体関係者の思惑はさておき、ネットでの話題を提供することで、当初の思惑を超えて地元住民以外にも、“突っ込むべきネタ”として情報を広げていくための、Web2.0時代ならではの新しい方法論の一つかもしれません。
職員間や職員家族とのインナーコミュニケーションという観点でいかなる効果があるのか、ちょっと気になるところではありますが。

(余談ですが、企業・団体ともに、腐女子向けの“イケメンキャラ”をオリジナルキャラとして設定するケースはみられません。企業・団体の意志決定者や現場担当者にそれらの嗜好性を持った人が不在なのか、“イケメンキャラ”に限らず正統派美男美女のキャラが一般消費者や住民に嫌われるからかは定かでありませんが、女性の社会進出に従い、これらのタイプが今後登場する可能性はあるかもしれません。)

いずれの方向を目指す場合でも、プロのマンガ家やイラストレーターが作った普通によく出来たデザインだと、通常のアニメやゲームキャラクターと同じような印象を与えることで、単なる記号として埋没してしまうか、逆に小器用な感じが鼻について住民から反発を招きやすい、というリスクに留意する必要がありそうです。
むしろ、第一印象で違和感があるくらいの方が、長期的には他と一味違う印象形成に寄与するものと思います。
なお、北京オリンピックのキャラクター「福娃(フーワー)」は、今回紹介した“ゆるキャラ”達とは毛色が異なる、普通にかわいい感じのデザインですねえ。

当Blogで以前紹介したように、2006年4月には「TVチャンピオン」で「ゆるキャラ日本一決定戦」が話題になり(現在第2回参加者募集中です)、昨年11月に鳥取砂丘で開催された「第2回ゆるキャラカップ」がニュースになったように、地方自治体のキャラクター自体は浸透しつつあるようですが、実のところ、きちんと企画・運営されているものは極めて少ないように思えてなりません。
単に素人っぽい見た目のデザインということと、そのキャラを使って地元住民とのコミュニケーションを深めるための体験接点を考慮したプランニングをいかにして組み立てるか、ということは別物だということを今一度認識する必要がありそうです。

一方的に思いを押し付けるのではなく、様々な機会や接点を通して対話を積み重ねることで互いの理解を深めるのが、コミュニケーションの基本です。これは地元住民と自治体との関係でもいえることで、そのための障壁を低くする手段としてのキャラクター活用ということを念頭に置けば、間違った方向には進まないものと考えます。

いみじくも葉山霄さん(旧名:原えりすんさん)が指摘しているように、今後「ヒット理論」にそったキャラが生み出されるほど形骸化していくのは必至、との指摘を肝に銘じつつ、いかに送り手の魂や精神を込めていくかがポイントとなることでしょう。

そういった意味で、4/3に受講するキャラクタービジネス実践講座「コーポレート&プロダクツ・キャラクター活用法」第4回では、「なみすけ」に携わっているファンワークス高山社長から詳しいお話を聞けることを楽しみにしています。

また、3/2の報道をきっかけとして最近一気にマスメディアやネットで格好のネタとなった「平城遷都1300年祭」のマスコットキャラクター(“ゆるキャラ”でも“萌えキャラ”でもないですねえ)が今後どんな展開を経てどのような効果をもたらすのかについても、引き続き注目されるところではあります。

今回は以上です。
次回は「東京国際アニメフェア2008」の報告をさせていただく予定です。
そして近いうちに、最近の企業オリジナルキャラクターのわかりやすい事例として、携帯電話各社のキャラクターについても言及したいと思っておりますので、なにとぞよろしくお願いします。

最終更新時間 2008年03月24日 11:15

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自己レスです。
横浜市の「とつか再開発くん」
http://www.city.yokohama.jp/me/toshi/totsusai/chara.html
札幌市の「スーちゃん」「リーちゃん」「ムーちゃん」「シティーちゃん」
http://www.city.sapporo.jp/seiso/slim/index.html
なども、自治体がメッセージを伝えるために作られた“ゆるキャラ”ですね。
探せばまだまだ多くの事例が見つかりそうです。

投稿者 野澤 : 2008年03月28日 18:10

杉並区産業経済課アニメ係の田口と申します。

地方自治体のオリジナルキャラクターというトピックにおいて、杉並区の「なみすけ」をご紹介いただき、ありがとうございます。

以前いただいたアドバイス、

【自治体キャラクターを育てるポイント】
・いかに地元の皆さんに愛され続けるか
・いかに一貫性と継続性を持って活動を続けていくか

を手帳に書きとめ、仕事の前に見返しています。

地道な取り組みとファンワークスさんのような民間事業者さんの活力と相俟って、少しずつですが広がりを見せています。

今後も注目いただけると幸いです。

投稿者 田口昌実 : 2008年04月14日 19:11

田口さま

コメントありがとうございます。
首都圏の自治体キャラクターが地域住民に受け入れられるためには、単に
 ・注目されるためのアテンションゲッター

ではなく、
 ・地域再発見のためのナビゲーター
 ・地元の結束を高めるためのシンボル
 ・家族や仲間で盛り上がるためのネタ

としての役割を果たすことが必要で、それらのポイントを「なみすけ」はしっかりおさえていると思います。

確かに、テレビアニメのキャラのように急激に人気を獲得するのは難しいとは思いますが、杉並区在住の同僚の息子さんも「なみすけ」の大ファンとのことですし、今後も期待しております。

投稿者 野澤 : 2008年04月15日 12:03

杉並区の田口です。

アドバイスありがとうございます。

早速、手帳に書き留めさせていただきました。

今後もブログを拝見させていただきます。よろしくお願いいたします。

投稿者 田口昌実 : 2008年04月15日 21:05

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