フランス料理「ピエール・ガニェール・ア・東京」(表参道)
パリの三ツ星レストラン、ピエール・ガニェールの東京店「ピエール・ガニェール・ア・東京」に行ってきました。このレストランは昨年11月末日に表参道にオープンして以来、東京で最も注目を集めているレストランの一つです。
さっそく感想ですが、劇場でオペラを見終わったときのような重量感のある満足を覚えました。おいしい/まずい、といった次元とは別の、より芸術的な次元での満足体験でした。
その秘密を独断で表現すると、『ピエール・ガニェールは「ボサノバ風ピカソ」である』といえます(実際にガニェールがボサノバをどう思っているかは知りませんが)。
ピカソとの共通点は、当意即妙であること、既存の枠にとらわれないこと、の2点です。ボサノバは、個性としてラテンの土着性を感じたので、こう形容してみました。
○当意即妙
ピカソは多産な画家で、一日に同じテーマで何枚もの絵を描きました。そしてそれぞれの絵は、色使いなどが一枚づつ違うにもかかわらず、それぞれが完結した調和の世界を作っています。これは、その時々のある瞬間を捉えたとき、その一瞬の雰囲気や空気を、全体観を持った唯一無二の作品コンセプトに結晶化できているからだと思います。そして、汲めども尽くせぬインスピレーションの泉がうかがわれます。
ガニェールも同様で、ある瞬間に与えられたテーマで、即興的に料理の全体観を作り上げていると思いました。検証のために店員に質問をしたところ、「彼は同じテーマでも今作るのと10分後に作るのとでは全然違う料理が出てくる」との裏づけのコメントを頂きました。
作曲家に例えるなら、楽譜に何度も修正を加える努力の人ベートーベンではなく、「楽想は一瞬で思いついて、あとは時間をかけてそれを楽譜に書き写すだけ」といったモーツァルトタイプといえます。
○既存の枠にとらわれない
晩年のピカソの絵は、小学生にでも描けると揶揄されることがあります。現実の写実性が低く、単純な線や色で構成されているからです。しかしそこには守破離の離の境地があります。ガニェールも同様で、例えばフランス料理なのにメインにポップコーンが使われたりしており、一見メチャクチャです。「離」の状態にいっちゃっております。そういえば、お米も使われておりました。
普通のレストランでは、例えばカレーライスならカレーライスのレシピがあって、お店同士の競争は辛いとか甘いとか玉ねぎがはいっているいないの次元で行われます。しかし、ガニェールにはこのような中間的なレシピはありません。与えられたテーマへのインスピレーションに従って、多くのレパートリーの素材をゼロから組み合わせて、独自の最終レシピを生み出していくのです。これにより料理が表現できる可能性の幅は爆発的に広がります。実際、メニュー開発のために年に4回日本に長期滞在するときには、驚くほど多くの香辛料などを持参してくるとのことでした。
○ボサノバ風の土着的ラテン気質
このような発想のモードでレシピが作られる場合、その人が持つ魅力的な個性が重要です。この個性は芸術家それぞれ違いますので、この点はピカソとは違います。
ガニェールの個性で僕が連想したのは、説明は難しいですが土着的なラテン気質です。土の匂いがします。ストラヴィンスキーが「春の祭典」で描いたような、春になると大地から一斉に草が湧き出てあたり一面を覆ってしまうものすごいエネルギーの生命力とそれへの賛歌を感じます。
ただし、あまりに土着的なため、既成概念に囚われている人々には受け入れられない恐れもあります。例えば、普通甘いものに隠し味としてお塩を少々入れますが、ガニェールは度を越した量の塩を加えることがあります。明らかな不協和音です。いみじくもピカソが「私は青の絵の具がなくなったときは赤の絵の具を代わりに使う」と言ったような自由さがそこにはあります。
ちなみに、このような強烈な個性に対しては、日本では「巨匠だから許される」といわれます。しかしフランスでは、無名な人でも、評価するひとは評価するようです。その昔、若いガニェールに三ツ星を与えたり、エッフェル塔を作ったりルーブルにピラミッドを作ったり。このような企画を評価するのはフランスならではであり、絶対に日本では通らないと思います。
そして、ラテン気質。なぜかボサノバやニューヨーク・サルサの力強くも洗練された軽妙な音楽が聞こえてくるようです。
素晴らしいレストラン体験は料理だけではなく内装も大切です。ガニェールの内装のテーマは「波紋」。薄茶色でタイルの壁や絨毯に波紋を表す円が描かれております。
ここで僕が連想したのは、ボードレールの「コレスポンダンス(万物交感)」という詩です。「自然は象徴の森であり、人間に語りかける。人間の五感が相互に呼応しながら反応し、精神と感覚が高揚して一つになる」。まさにガニェールの芸術にピッタリ当てはまります。
では、このように創造的なレシピをガニェールはパリからどのように品質管理しているのでしょうか。若い腹心のシェフの派遣、徹底したレシピ、厨房に設置された3つのWEBカメラ、電子メールや電話により、品質の再現を保証しております。このあたり、リーダーシップ(変革)あるいはイノベーション(創造)と、マネジメント(仕組み化)の見事な融合です。ちなみに芸術とITも融合しています。
前置きが長くなりました。では、当日のメニューをお楽しみ下さい。
☆ ☆ ☆
1.黒いジュレをまとったポルト酒風味のフォアグラのクリーム、赤ビーツのアイスクリーム、マンディアンのカリカリトーストを添えて
2.ターメリックの効いた帆立貝のロザス仕立て、カリフラワーのクリーム
3.スズキのムニエル、エジプト豆の粉を使って ほろ苦い野菜たち(アンディーヴのフォンデュ/ロメインレタス/大根のカンパリ漬け)
4.小さな貝類の“ミトネ”、高貴なバターの香り ポトフ仕立てに火を入れたこぶみかん風味のポロ葱
5.手長海老:3種の調理法で
-手長海老と緑マンゴー入りタルタル
爽やかなグレープフルーツの酸味
-パプリカ風味のポワレ 緑レンズ豆とクルミを添えて
-冷製ジュレ 西洋わさびのムースを浮かべて
6.ニュージーランド産仔牛のフォンダン ポップコーン、パセリのアクセント、リコッタチーズとトウモロコシのクリーム
7.フロマージュ
8.グランデセール(7種)
*基本情報**
店名: ピエール・ガニェール・ア・東京
住所: 東京都港区南青山5-3-2 南青山スクェア4F
電話: 03-5466-6800
**TPO**
■友人と食べ歩き
■家族と
□短時間で手軽に
■デートで
□合コンで
**予算***
□~3,000円
□3,000円~7,000円
■7,000円~
最終更新時間 2006年01月29日 22:41
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.blwisdom.com/mt/trackback/1104
このリストは、次のエントリーを参照しています: フランス料理「ピエール・ガニェール・ア・東京」(表参道):
» ピエール・ガニェール・ア・東京 from 東京美食☆探検記
ピエール・ガニェール・ア・東京
住所:東京都港区南青山5-3-2 南青山スクェア4F
電話:03-5466-6800
営業時間:11:30†14:0... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2006年03月29日 02:35
» 大発表! from 食べ歩きblog : J-WAVE WEBSITE : [M+] MUSIC PLUS
8日(木)の「WILLCOM BLOG ON!」では マッキー牧元の食べ歩きbl... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2006年06月03日 00:44
ボサノバ風ピカソのようっておもしろいですね
たしかに一般的な料理店でメインにポップコーンなんて
出てきたら普通にお客は怒りますね
伝統的な料理のレシピもこなせるから
子供心の料理も許される
しかもそれは一見変に思えても実は理にかなったりしている
料理・・・理を料るもの とはよく言ったものですね。
とてもよいBLOGだと思いました。
たまたま拝見しましたが、これから楽しみのひとつにします。
よろしくお願いします。
投稿者 Anonymous : 2006年02月26日 09:51










