タクシーという空間
『Taxi Driver Wisdom』という本があります。
直訳すると『タクシーの運転手の知恵』。
アメリカのタクシードライバーの名言集です。
ボストン在住時代に仲良くなったタクシーの運転手さんにこの本のことを教えてもらったのですが、装丁もステキだし、写真もふんだんに使ってあります。すぐ読み終わってしまうのが残念ですが、ちょっとした贈り物などにいい本だと思います。
中に掲載されている言葉は例えば、
As soon as you meet someone,
you know the reasons why you will leave them.
(誰かを嫌になってその元を去る理由なんてものは、初めて相手に会ったときにわかるもんだ)
こんな感じです。うう、納得。大体恋愛なんかでも、最後別れるときの理由は、最初に『あれ、この人のココ気になるな』と思ったことが結局大きくなって戻ってきて・・・ってことだったりしますよね・・・。
ともあれ、そういう人との出会い・仕事などの人生にまつわる彼らなりの格言が詰まった1冊なのです。私は海外に行くと、現地の人と出来るだけ話そうとするんですが、その際に一番よく話すのがタクシーの運転手さんです。国によっては、地元の人である場合もあるし、移民の場合もあるし。どちらにせよ、老若男女ありとあらゆる人を運んできた人たちですから、面白いエピソードも沢山持ってるし、話しているとその土地の素の顔が見えて楽しい。また、往々にしておしゃべり好きな人が多いので、こちらが聞かないような情報まで色々教えてくれて助かったりもします。
以前シドニーを訪れた際には、多民族国家だけに乗るたび運転手さんの出身国が違ったりして、バングラディシュでは日本よりオーストラリアが移民先として人気あるんだとか、シンガポールから来てオーストラリアの大学で会計学を学びながら働いてるとか、多種多彩な話が聞けました。
このシンガポールの方のように、ボストンでもタクシーの運転手といえば、移民の人たちがほかの仕事や勉強や夢のために頑張りながら生活の糧として選んでいる職業でした。一度イラク出身の詩人(詩で生計を立てて行こうとしていた)の運転手さんを密着取材して記事を書いたこともあります。また、起業して軌道に乗るまでの副業として運転していたアメリカ人もいました。
ちょっとしたコミュニケーションが楽しめる空間でもあるタクシー。もし皆さんも海外に行かれることがありましたら、タクシーに乗った際ひとことかけてみると、何か面白いことがあるかもしれません。
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Politeな私たち
前回のブログで「politeな私たち」と書いていて思い出したのですが、
先日日本経済新聞の取材を受けた際(8月16日火曜日夕刊<首都圏版>に出ます・・・よかったらご覧ください)話したボストン留学時代のエピソード。
掲載される文面を送っていただいたら割愛されていたので、こちらに書いてもいいかと(笑)。
私はボストンの大学院でジャーナリズムを勉強していまして。
大学院にもリサーチ中心のところと、professional schoolと呼ばれる実技中心の学校があるのですが、私が通っていたのは後者でした。
実際に警察署や消防署に行ってネタを探して記事を書いたり、自分でテーマを決めてあちこちに取材をして長い記事を書いたりしました。取材先の方々も、アメリカでは「学生はあなどれない」ことを知っているので(学生だろうが何だろうが能力がある人が認められるので、我々が書いた記事がそれこそTIMEやThe New York Timesに掲載される可能性だってあるわけです)、真剣に話を聞いてくれて、学びごたえのある2年間でした。
で、その実践授業が本格的にスタートする直前に用意されたのが、ある教授のクラスでの「模擬取材」でした。授業開始後、突然2人の学生がクラスルームに入ってきて、教授に対し、
「あなたは私が拾ってきたネタを盗んだひどい人だ!」
「僕も彼女が取材したのを知っている!勤務先に言いつけてやる!」
と大騒ぎするのです。実際にThe Boston Globeという有名紙のジャーナリストだった教授は、「外で話そう」と二人を廊下に連れていって、残った我々は「どういうこと?」「そんなことってあるんだ・・・」「確かにあの先生ちょっと怪しかったよね」(ひどい)などと話していました。
そこに教授が戻ってきて、
「さあ、今の事件の記事を書いてみよう」
・・・つまり、あの騒ぎは全部彼が仕組んだことで、今日1日を使ってあの2人を探し出し、連絡し、取材し、コメントをしっかり入れた記事を提出しろというのです。「なんちゅうことをするんだ」と驚きはしましたが、皆ジャーナリストの卵たちはとにかく急げ!と我先にと外へ。
連絡先の番号は分かるように設定されていたのですが、いかんせんこの2人がつかまらない・・・いつかけても留守電なのです。「あーもうだめだあきらめたよ」という人が続出、私はというと、英語力ではアメリカ人の学生にかなわないのだから、ととにかく人より多く電話をかけまくりました。深夜2時まで。
もう無理だろうなー・・・と思っていた次の日の朝、なんと取材相手のうちの1人から電話がかかってきたのです。
「で?何が聞きたいの?」とぶっきらぼうな声で。
必死で質問をし、稚拙ながらも記事をまとめ、そして次の授業で、その取材相手の二人が現れました。自分が取材に応じた相手とその理由を話すために。
私に電話をかけてきてくれた彼女いわく、
「私はYukoに折り返し電話をしました。なんといっても、彼女が一番し
つこくて(persistant)、そして一番礼儀正しかった(polite)から」
確かに電話するたびに
"I'm so sorry to bother you again, but..."
"I know I've been troubling you, but I would truly appreciate it if you could give me a call."
などと留守電に吹き込みまくっていたのです。でも、自分にとってはそれが特別なことだとは思いませんでした。
するとアメリカ人の学生が突然、
"Of course! She is JAPANESE!"
と叫んだのでした。
世界的に知られている「日本人=礼儀正しい」という常識。
正直私はその中でも礼儀正しくないほうだと自認してるのですが、それでもなんだか自分の日本人らしさが役に立ったことがうれしかった。今でも異文化に触れる際は、日本人である自分を大事にしつつうまく新しいものと融合させていけたらいいなと思ってます。
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日本語でしか言えないこと?
先日ブログで「英語でしか言えないこと」について話しましたが、その際一緒に話していた弊誌編集部員曰く、
「逆に日本語でしか言えない表現は『懐かしい』と『もったいない』だと思うんですよね」
うーん、なるほど。
懐かしいという感情は英語のnostalgicとはやはりニュアンスが違う気がします。
nostalgicには個人特有の懐かしさというよりは懐古主義のようなものを感じるというか。
そして「もったいない」に関しては、もうどう訳して良いのやら、という感じ。
この言葉に出会ってその概念を伝えようと思った、という2004年ノーベル平和賞受賞者でケニア共和国環境副大臣、ワンガリ・マータイさんの言葉やエピソードを集めた、その名も『もったいない』という本が話題になっていますね。彼女は環境保護の合言葉として「MOTTAINAI」を世界に広めようとしているとか。
私はまだこの本を読んだことがないのですが、この言葉を聞いてふと思い出したのが「ほっとけないキャンペーン」です。こちらも著名人がPRしているせいもあって、売られているホワイトバンドもかなり浸透してきてますね。うちでもインターンのYさんが足首に着けていて、実は最初は彼女からこのキャンペーンのことを聞いたのですが。
「『~ない』、というのが何かキーワードになってるのかなあ」
「おお、それは面白い見方ですね。どうなんでしょうねえ」
思えば日本語って、「~するな」とか、はっきりした否定の言葉を使わない習慣があるのではないでしょうか。
アメリカでは「ほっとけないキャンペーン」は、「One -The Campaign to Make Poverty History-」という名前。日本語だと否定形を使ったほうがインパクトが強いのかも。
そういえば、昔アメリカへ留学して帰ってきた直後、道路上にある車を運転する人に向けた「止マレ」という言葉がやたらきつく見えて驚いたことがありました。Politeな我々のpoliteな性質を持つ言葉だからこそ、逆のアプローチが使えることがあるのかもしれません。










