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2005/06/03

母国語と外国語 6


「母国語と外国語」第6回です。
この話には色々とリアクション頂いていて、嬉しい限りです。てっきりもっとマイナーな話題かと思っていたので(笑)。ありがとうございます。もう少しお付き合いください。


さて、前回Aちゃんのエッセーを掲載した後に、「次回は反対に両親の海外赴任により外国での生活を同じく経験した中で、比較的うまく両方の言語を習得する「日本人」となり得た人に話を伺いたいと思います」と書きましたが、何を隠そうその人とはうちの編集部スタッフのことです。


彼女は私の前職時代から一緒に働いている仲間なのですが、Aちゃんが来た際のアルバイト募集に応募してきたとき、大学4年生でした。履歴書には「TOEIC990点」の文字。周りに「TOEICって満点何点だっけ?」と聞く私、「990点じゃないですか?満点ですねこの人」とう答え。へえー!と驚き、早速会ってみたところ、「小さい頃カナダに住んでました」と言うのです。「あー、またAちゃんのパターンだったりして」などと思いつつ、同じ試験(和文英訳・英文和訳)を受けてもらったところ、日本語英語ともにずば抜けていて、採用に至ったのでした。


以来約5年ほど一緒に仕事をしてきてまして、当時アルバイトさんだった彼女も今では立派に編集部で中枢を担い、バリバリといい仕事をしてきてくれています。うちのスタッフの話なので、手前味噌になるようで恐縮なんですが、私の目にもほぼ完璧に近いバイリンガルに見える彼女に、今回話を聞いてみることにしました。まずはカナダ滞在時代(小学校)どのようなことをしていたのか、特にご両親が気を使って何か特別なことをしていたのか、ということについてです。


以下、会話調になりますがご覧ください。


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私:カナダにいる間、ご両親が何か気を使ってやってたことってある?

彼女:向こうでは、うーん、むしろ日本語を忘れないようにということでしょうか。子供ってすぐ適応するので、兄弟間はあっという間に英語になっちゃうんですよね。それを親とは絶対日本語というのを崩さなかったり(そうなると親はすぐに適応しないからしようと思ってもできないと思いますが・・・笑)、補習校に行ったり。あと通信教育もやってましたが途中であまりにサボるので解約されたような(笑)。

私:補習校って?

彼女:土曜日だけ行く学校です。日本人学校というと全日制のもので、日本から先生が派遣されてくるらしいのですが、補習校は日本政府から補助は出てますが、基本的に現地運営みたいな感じです。

私:そこではどういうことをするの?

彼女:所詮、日本の学校の子供が6日かけてやることを1日でやるのは無理なので、国語、算数、理科、社会しかなくて、特に国・算がメインです。あとは宿題が毎週たっぷり。毎日日記を書けとか。理社は実験ができる設備もないし、社会はカナダに住んで日本の地理とかやっても全然ぴんとこなくて面白くないので、みんなモチベーションは低かったですねー。かなりおろそかになってました。あと補習校でも一番仲良かった子とは休み時間とか英語になってました。

私:でも普段の学校は英語、家庭は日本語で、頭の中が混乱することはないの?実際に「identity crisis」に苦しんでる人たちと違うのはどういう部分なんだろう?

彼女:日本の学校に帰ってきたときに、友達と話していると気を抜くと英語が出そうになって自分でも驚いたこととかはありますが、identityとしては完全に日本だったことでしょうか。カナダ生まれでもないし、日本に帰ることもわかってたし。英語ができない相手(補習校でもフランス語の現地校に通ってた子は日・仏しかできないので)には日本語で話してましたし、混乱って感じではなかったですね。

彼女:ただ、そういえば親の努力といえば、宿題とかはかなり一緒に見てもらってましたね。一番苦労したのは、難しい単語があって辞書を引いても、その日本語の漢字が読めない+意味が分からないことです。かといってジュニア版英和辞典とかには難しい単語は載ってないし。たとえば、rejectという単語があって、辞書を引いて「拒否」って載っていても「きょひ」と読めないからまず漢和辞典を引けと言われ、やっと読み方が分かったら今度は国語辞典を引けと言われ、そこに書いてある意味とかもよく分からなかったりして。もう何が何だか、やってるうちに恐ろしくやる気をそがれて苦痛でした(笑)。


私:
なるほど(笑)。でもそれを「やれ」とご両親が言ったのね?

彼女:一緒に見ていたのは主に母ですね。自分で調べる習慣をつけろ、みたいな感じで。というか、母も説明してくれるのですが、口頭で日本語で説明されても分からないんですよね・・・。「拒否」はわりと分かりやすいですが、例えば「主観的」とかそういう概念的なことって定義から入るのはとても難しい・・・。多分そういう語彙を増やすのって、ひたすらいろんなものを読んで、使われてる中から吸収するしかないんでしょうね。・・・とEZのコンセプトに話がつながりました(笑)。

私:えらい!(笑)

彼女:でもそれは本当に体感してるのでよく分かるんです。日本語で訳してあって、その定義は理解できたとしても、どう使われてるかを知るにはひたすら量をこなすしかない、と。

私:なるほど。じゃ海外にいても日本語ネイティブであろうとするためにはそのプロセスで手は抜けないってことだね。

彼女:そうですねー、読書は本当に大事だと思います。私もそれでも補習校に小さな図書室があって、毎週5冊だか10冊まで借りてよかったのですが、毎週フルに借りて読みきってました。なんか日本語に飢えるというのもあるかもしれませんが。同じく親の仕事の都合で海外にいた友人も、補習校にも行ってないわりには日本語がうまいのですが、家中の日本語のものを片っ端から読んだといってました。

私:なるほど、大事なのはいる場所じゃなくて、何をするか、そしてどの方法を取るかということなのかもしれないね。

彼女:そうですねー。私たちの読書に関しては、努力というか、そうしたかったので勝手にそうしてただけですが。やっぱりなんだかんだいっても日本語の方が得意だったからかもしれませんね。日本語の方が楽だったり。あとは希少だからとか(笑)。私は逆に(今でもわりとそうですが)日本に帰ってきてからは向こうの雑誌を定期購読したり、洋画を見たりしたくなったので。

私:珍しいから手に入れたいわけだ(笑)。

彼女:そうそう(笑)。情報っていっぱいありすぎるとどれも価値が薄まるというか、ちょっとしかないものだと、それだけ読めばいいので。

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話を聞いていると、「どの国の言葉・identityをメインに持つかをはっきりさせること」「言語習得のために本人に苦しませてもちゃんとしたプロセスをたどらせること」「興味を持って量を沢山吸収すること」などのポイントを彼女のご両親がきっちりと押さえていたのが見えてくるような気がします。


今回は日本語習得がメインの話になっていますが、次回は彼女から聞いた、「帰国後(今度は)培った英語力を保ったコツ」について掲載したいと思います。


(続きます)

最終更新時間 2005年06月03日 18:45

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以前も投稿しましたが、僕と編集部の方の徹底的な違いは(編集部の方は偉い!!)、外国では、日本語をしっかり勉強し、逆に日本では、恐らく英語力のKeepにほぼ無意識!?に取り組んだことと思われます(ぼくも米国滞在時には補修校に通っていましたが、実際は補修校以外での読書等で帰国後決定的な差がつくと思います)。確かに海外では日本語に飢えますが、昔はWeb等がなく日本語と接する機会が極めて限定的でした。海外では日本語に触れさせる親の努力も必要と感じます。あと、端的には結局ご本人が2ヶ国語を習得する為、人の2倍の努力が必要だということです。でも、努力っていうよりも語学力は好き好んで身に付けるものですよね。
ここで僕の苦い経験の一例ですが、大学の帰国子女入試前の勉強時に"Mercy"といいう単語を勉強しようと思ったのですが日本語訳の「慈悲」の意味も分からなかったことです。英語も日本語も分からず困ったものでした。今では大丈夫ですがね(笑

投稿者 Ken : 2005年06月13日 11:37

Kenさん、実感のこもったコメントありがとうございます!
「実際は補修校以外での読書等で帰国後決定的な差がつくと思います」とお書きになってくださってますが、きっとそうなんでしょうね!またうちの編集部の彼女のご両親をはじめとして、子どもの教育の関して決して表面的なものではなく、本質を捉えた関わり方をしようとしている周囲の努力も見えてくる気がします。

投稿者 伊東 : 2005年06月14日 13:39

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