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2005/04/22

母国語と外国語 3

さて、次にそうした「中途半端な自分」に悩む女性に出会ったのは約5年前になります。


その頃私は『Mini World』という英文誌の編集長をしていました。『English Zone』などと同じく、この雑誌も「やさしい英語で読む」ことがコンセプトでしたので、スタッフは基本的にバイリンガル、外国人も多く働いていて非常にインターナショナルな雰囲気の中仕事をしていました。


あるとき、編集補助としてアルバイトを雇おうという話になり、インターネットやThe Japan Timesを通じて募集をかけました。補助とはいえ、やはり英文記事を扱う仕事になるため高い英語力が必要で、送られてきた履歴書でもTOEICスコアや英文レジュメなどを特に重要視し、何人かを面接に呼びました。


その中にAちゃんがいました。
Aちゃんは当時18歳、いわゆるアメリカンスクールの卒業をまもなく迎えようとしていたところでした。TOEICスコアは確かほぼ満点に近かったのではないかと思います。


面接が始まってすぐ、私と同席していた副編集長は何かおかしなことに気づきました。


「Aさんは・・・ですか?」
「・・・はい?」


Aちゃんはところどころ我々の質問を理解することが出来ていないようなのです。
改めて履歴書を見てみても、海外生活や留学経験などは特記されていません。確かに小学校からずっとアメリカンスクールに通ってはいるのですが、海外へは旅行もしたことがないと言うのです。不思議に思いながら、とりあえず筆記試験を受けてもらうことにしました。英文和訳、そして和文英訳のクイズです。


時間が来て、答案用紙を引き上げようとしたとき、「おまわりさん」という言葉が目に入りました。英文和訳の解答用紙です。彼女は、「police」という単語を「警察」ではなく、「おまわりさん」と訳していたのでした。これはいくらなんでもおかしいのじゃないかと思い、話を聞いてみるとこういうことでした:


彼女にはバイリンガルの母親がいて、その教育方針で小さい頃から英語の勉強をしてきた。小学校・中学校・高校全てアメリカンスクールに通い、家庭でもなるべく英語で話すようにと言われていた。しかしまったく英語を話せない父親とは思春期を迎えてあまり会話もなくなり、気づけば自分の友達も皆アメリカンスクールの友達だらけで、国内にいながらにして日本語を話す機会を失ってしまった。


「じゃあ、一度も海外に出ていないのにわからない日本語が沢山あるの?」
「そうです」
「・・・もうすぐ高校卒業だけど、その後はどうすることにしてるの?」
「私には日本の大学に受かるだけの日本語の力はないから。帰国子女の枠で入学できるわけでもないし。海外の大学に行くとか・・・それしかないと思う」
「留学したいの?」
「したいとかじゃなくて、日本には私が行ける場所がないから」


口数の少ない彼女でしたが、その様子から何かまだまだ言い足りないことがあるような気がして、私は彼女に『Mini World』次号の1ページをあげるからエッセーでも書いてみないかという話を持ちかけました。Aちゃんは快諾してくれました。


(続きます)

最終更新時間 2005年04月22日 18:35

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トラックバック時刻: 2005年06月30日 11:26

Aちゃんの感覚わからなくもないです。小生は小学生の時3年間と高校3年間をアメリカで過ごし、大学は帰国子女枠で日本の大学を卒業して、日本の一般企業で働いています。何故か、中国圏を長く担当してしまって、今では日本語、英語とちょっとした中国語ができますが、自分の中では、Semi Bilingual+ちょっとChinaっていう感じでどれも自分に満足のいく語学力ではなく、コンプレックスになってます。かといって、英語と日本語に関しては語学学校で学べるレベルはないのです。因みにTOIECは900ぐらいです。こういう方が以外と多いと思います。

投稿者 Ken : 2005年04月25日 11:37

Kenさん、コメントありがとうございます。
同じことを経験していない多くの日本人にとっては、様々な言語を使いこなせることはきっと一見「うらやましい」ことでもあるんでしょうね。ところが本人にとっては実はコンプレックスになっている・・・あまり知られていない事実なんだと思います。

いよいよ次回はAちゃんのエッセーを掲載します。
よかったらお読みください!

投稿者 伊東 : 2005年04月27日 17:51

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