− 第12回 −
9月 中世の亡霊(ブイヨン城) (2007年9月25日公開)
フランスとの国境近くアルデンヌの森におおわれたスモワ川の渓谷地帯にブイヨンと言う小さな町がある。森の中の坂を下ると川沿いに白壁、黒屋根のフランス風の町並みが現れる。チョコレート屋あり、パリ直送のフアッションの店あり、花屋あり。その近代的な町並みのすぐ上の台地に今や自然石と化したかのようなブイヨン城がうずくまっている。
1096年、アルデンヌ公家第5代当主、ゴドフロア・ド・ブイヨン侯は第一次十字軍を率いてこの城を出発、はるかエルサレムへ向かった。ゴドフロアはかの地でイスラム教徒を駆逐したものの1100年、客死した。こここそは法と名誉を重んじ、異教や異端と戦うことを旨とする中世騎士道の中心だったのだ。
商店街の上のブイヨン城はまるで中世の亡霊と見える。ベルギーにはこうして時を自在に往来できる不思議な場所がいくらでもある。
写真・文: 金子 晴彦










